Bellmare

ビッグウェーブをもう一度
〜湘南ベルマーレ再生物語



不安はある。でも暴れん坊も復活を。 01.3.1

「ものすごく若いメンバーになりそう。平均年齢22、23歳なんじゃないかな」
 田中孝司新監督がそう語る通り、今シーズンもベルマーレは“若き雑草集団”で臨む。

 となれば思い浮かぶのは昨年の失敗。経験の浅い選手たちだけに、黒星を重ねるごとに、自信を失い、うつむき加減の選手が増え、消極的なプレーが目立つようになっていった。
 就任直後に田中監督が「昨年は自信を失っているようにみえた。何としても勝ってやるという姿勢がなかった。でもポテンシャルはあるチーム。もっといい成績を出せるはず」とコメントしたのもそうしたチームの雰囲気を見抜いていたから。

 その意味では、前園、松原という実績のあるスター選手がチームを去り、ほぼ同じレベルの選手たちが集まった今季は、若い選手たちが実力を発揮しやすい空気にはなっている。「頼れる選手」がいないことが、逆に「吉」と出ることもあり得るだろう。
 いずれにしても、彼らがいかに自信をもって戦えるか、言い換えれば、どれだけ「がむしゃら」にピッチの上で若さを爆発させることができるかが、今季のベルマーレの成績、そして平塚競技場の盛り上がりを決めることになるのである。

 さて、その若きイレブンの布陣だが、今季のベルマーレは「3バックというより3+2バックで、攻める時には前へ出て行くという形でやりたい」という監督の意向のもと、5−3−2システムをとりそうだ。

 とはいえスタメンは開幕直前になっても流動的。コロンビアから獲得したパラシオ(DF)、アングロ(FW)、右アウトサイドの高田保、そしてGKの伊藤。この4人がほぼ確定しているが、残りのポジションは開幕まで横一線の争いが繰り広げらているという状況だ。
 注目はトップ下。攻撃の核ともいえるこのポジションには、ルーキーの鈴木良の抜擢が濃厚だ。東海大翔洋高校出身で、ボール扱いのうまさは絶品。運動量もあり、田中監督の評価も高い
。今季のベルマーレの目玉選手である。

 その逆に気にかかるのは左アウトサイド。現時点では坂本が第一候補だが、彼一人で長いシーズンを乗り切るのは難しい。開幕直前に元ヴェルディの戸倉のテストも行なっているが、いずれにしてもこのポジションには緊急補強、あるいはコンバートが必要。高田保を左で使い、右には田辺か樹森を起用する可能性も高い。
 また10番をつける予定だったコロンビア選手が結局獲得できず、急遽同じくコロンビアからボランチを獲得することになった。アメリカ・ワールドカップにも出場したベテランだが、開幕には到底間に合いそうもない。これまた不安要素と言わざるを得ないだろう。

 もっともすでにお察しの通り、不安要素をあげればきりがない。だが、若さは時として爆発的な力を発揮するものだ。またゲームを重ねるごとに急成長する選手が現われる楽しみもある。
「勝つことが一番いいのは当然だけど、最後まできっちり戦うことが大事」という田中監督の言葉に選手が応えることができれば、サポーターも決して見放したりはしないはず。

 とにかく、かつて“湘南の暴れん坊”と呼ばれた頃のような思い切りのいい爽快なサッカーを期待したいものだ。<ストライカー01・4月号>