BELLMARE 2003

 10度目の開幕。   2対0 vs山形 @平塚  03.3.15

 2003年シーズンの開幕戦。サミア新監督を迎えての船出。そして、ベルマーレとなって10年目のスタート。そんなわけでちょっと特別な気持ちで平塚へ向かった。
 もちろん10年目といってもこれから20年、30年、100年と続いていく中ではちょっとした節目であるにすぎないし、開幕戦といっても44分の1試合にすぎないことは百も承知。
 特に、ここのところの僕は(そういう年齢になったということなのだろうか)歴史的視座に立って物事を俯瞰しなければ、という思いが強くなっているから、たかが10年目の1試合に過剰に感傷的になるべきではないと自戒する気持ちも強い。
 にもかかわらず、今年の開幕に特別な思いを抱いてしまうのは、ひとえに「もしかしたら」という期待感からなのだと思う。
 もしかしたら――今シーズン終了時、歓喜の瞬間に立ち会えるかもしれない。

 その一方で、僕は中田英寿から諭すように言われた言葉も思い出す。
「がっかりしたり、腹が立ったりすることはないのかって? カワバタさん、それは期待するからだよ。期待するから落胆したり、腹が立ったりするんだよ。期待したってしなくったって、できることはできるし、できないことはできないんだから。それを受け入れるしかないよ」
 確かに。
 期待が大きいと実現しなかった時の落胆も大きいかもしれない。その過程で憤ってしまうかもしれない。

 J2へ落ちてから、クラブ存続すら危ぶまれた数年前から、僕は「勝った負けたよりも○○」の○○の方を圧倒的に優先させてきた。勝敗に一喜一憂することはほとんどなくなっていた。
 でも今シーズンは一喜一憂してみたいと思うのだ。落胆が大きかろうが、近視眼的であろうが、少なくとも僕自身の中では、いつも勝利を願い、結果を求め、「もしかしたら」と大きな期待を抱き続けていたいと思う。昨年のチームを見ながら、「もしかしたら」と思えたから。
 今年はチャンスなのだ。
                   *       *
 スタメンリストを見たら、カタカナが一人もいなかった。新外国人ばかりかパラシオスの名前もない。むむっ。それが第一印象。
 で、キックオフ。前線で金が頑張っている。ポストに入り、巧みではないがちゃんとボールをキープしている。
 攻撃面でのチームのへそはやっぱり熊林だ。彼の展開力、ゲームメイクはやはり欠かせない。

 ディフェンスラインはいわゆるフラット3だった。もちろんトルシエ監督下の日本代表ほどの精度があるわけではない。それでも中央の池田を中心にラインを揃え、高く保とうという意思は見えた。ラインを上げながら、手を上げてオフサイドをアピールする姿などは、まさにトルシエ風。
 とはいえ特に前半はオフサイドをとれない場面も多く、リスキーに映る。もちろん、この守備システムがベルマーレの人材に、また44試合というJ2に適しているかどうかを判断するには時期尚早。
 僕自身はちょっと怖い気がしたが、試合後に白井にきいてみたら感触は悪くなさそうだった。
 もっともボールが右サイドにある時には左アウトサイドの良和、左サイドにある時には右アウトサイドの梅山がDFラインに入る形で、実質4バックを形成することも多かった。
 その両アウトサイドは右の梅山はアーリークロス、左の良和はドリブル、を軸に攻撃を仕掛けていて、これは見ていてなかなかスムーズ。いい感じだった。

 前半11分、今シーズンのベルマーレ初ゴールが生まれる。
 コーナーキックから白井がヘッドで決めた。白井はベルマーレに来た頃はあまりコンディションがよくなさそうだったが、去年あたりから随分フィットしてきているように見える。今日もDFではさすがのパフォーマンスで、普段ベルマーレの試合を見に来ない著名サッカーライター氏も「やっぱり白井はいいね」なんて誉めてた。

 サミア監督は試合中、ベンチの前へ出て、選手たちに適宜指示を与えていた。指示の声がスタンドまで聞こえていて、それが日本語だったので僕は嬉しくなった。さすがサミア、トルシエとは違う(なんて書くと、トルシエファンの人にまた怒られてしまうけど)。「シュウチュウシテ」と叫んだり、高田ヤスと言い合ったり、ああいう光景は見ていてほっとする。

 後半途中からはほぼゲームを支配。そして2点目は、ヤスが右へ開き、熊林が折り返したボールに2人の選手が飛び込むという理想的な形で、坂本が決めた。
 パスで崩し、しかもゴール前にちゃんと二人の選手が詰めていたのだ。見事な点だった。
 交代出場で入った石原も加藤大志も若さと思い切りを感じさせる溌剌としたプレーで、なかなか楽しい。大志がケガをしてしまったのは残念だけど、でもワールドユースが延期になったことを思えば、彼にはツキがあると思う。そういうツキというのはものすごく重要なことなので、ケガはかわいそうだけど、大志はもしかしたら大物になるかも、なんてポジティブに考えたりした。

 そんなわけでまず1勝。得失点差+2。
 試合後の会見でのサミアはちょっと「!」で「?」ではあったけど、そんな瑣末なこと(だと願いたい)は気にしないで、今日は白星スタートを喜びたい。



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