[取材ノートからC]
99年9月23日・平塚競技場 ベルマーレ0対2マリノス
「点が取れないのが悔しくて悔しくてしょうがない」
そう一言吐き出した古前田充監督の表情は歪んでいた。いつも飄々としている彼だけにその無念さが伝わってきて、心が痛んだ。
この試合でベルマーレが放ったシュートは14本。対するマリノスは7本。しかし、ベルマーレはマリノスの前に完敗した。
取材ノートにも随分乱暴な筆でこう書き付けられている。
99年セカンドステージ第10節
「遅攻は“飛んで火にいる夏の虫”。Mはしっかり引いて3バック+2サイド。(パスを)出すところがない。無理やり入れると取られて逆襲受ける/失点後はほとんどボール持てない。Mがずっとキープ/GKへのバックパス多い/サポーター。怒っている……」
もはや崖っぷちだった。いや、多くの人々は心のどこかですでに覚悟していたかもしれない。
それでもセカンドステージのベルマーレは古前田が監督に復帰し、若手を積極的に起用。前線では西本竜洋がブレイク、両サイドも臼井幸平、和波智広が溌剌としたプレーを見せるなど「暴れん坊」らしさを垣間見せていたのだ。第1節でグランパスを4対2で破った試合などは復活を期待させるものだった。
しかし――ホームでマリノスに敗れた後、セレッソに1対6の完敗、さらにエスパルスに善戦しながら競り負け、ついにその日はやってきた。
11月20日、第13節、浦和レッズに0対2。ベルマーレ平塚のJ2降格が確定した瞬間だった。
このシーズン、不甲斐ない戦いにサポーターは泣き、苛立ち、怒っていた。やるせなさの発露として応援が放棄された。抗議の意思表明として。
それでもベルマーレは続いてきた。
そしてスタンドにはJ2で戦う選手たちを応援するため、たくさんのサポーターがいまも集っている。
* *
今年ベルマーレはJ10年目を迎えました。この機会にベルマーレの「あの時」を振り返っておこうと思い、過去の取材ノートを引っ張り出してみました。今後も不定期で綴っていくつもりです。
なお本稿は「ベルマーレホームタウン新聞」に寄稿したものです。