COLUMN


 シドニー五輪TV観戦記(00.10.1)
 オリンピック閉幕。思いつくのは…。

 閉会式を見ながら書いている。
 シドニー行きを諦めてから、自己免罪の気持ちも少しあって、精力的にテレビでオリンピックを見た。毎日というわけにはいかなかったけど、それなりのペースでここに雑感を書き綴ることもできた。そんなわけで、最後も雑感をずらずらと。

 まず柔道の篠原選手の判定。「誤審」ということをIJFも認めるようなコメントが新聞に掲載されていたから、たぶん、いや、きっと「誤審」なのだろう。「誤」かどうかの判断基準は、言うまでもなくルールにある。スポーツにはルールがあって、それに則って競技は行なわれ、判定が下される。
 だとすれば、日本柔道はルールに則ってきちんと対処すべきだった。試合場の脇にいる斎藤コーチは「頑張れ!」と応援するためだけにあそこにいるわけではないだろう。(こんなことは僕をはじめほとんど人は知らなかったが)「選手、審判が畳を降りたら判定が確定する」というルールを知らなかったわけではあるまい。
 だったら、審判をそこにとどめ置き、抗議をするべきではなかったか。あとになって抗議文を提出するという方法では、無意味だということを知らなかったのだろうか。

 もっとも以上は「スポーツ」ならということだ。この辺が、特に日本では微妙なニュアンスが絡んでくることなのだが、「柔道はスポーツだろうか?」という素朴な疑問が僕のなかにはある。柔道をスポーツではなく、「柔の道」だと考えれば、判定に異議を唱えることはきっと考えられない。篠原選手の「弱いから負けた」という潔さに、僕たちが共感するのは、柔道をスポーツではなく武道としてとらえているからに他ならない。

 このあたりを柔道界はきちんと考えるべきではないか。柔道がJUDOとなった瞬間に、柔の道はスポーツになった。スポーツ、つまりコンペティションとして考えるならば、それは勝たなければならない。ならば、ルールに則って抗議もするべき、ということになる。
 そうではなく、我々の柔道は「武道」であって、相手に勝つことよりも、己に克つことこそが、目的なのだというのなら、潔く、後になって英文で抗議文を作成するなどということはせず、判定に従うなり、極端なことを言えば、JUDOから脱退するなり、すべきだろう。

 島国の中で行なわれている間は、いい。競技を国際化するということは、そういうしっかりとした己の競技に対するアイデンティティがなくてはならなかったのではないか。
 などなど随分話が大袈裟になってきたが、柔道/JUDOはスポーツだろうか、それとも武道だろうか、という問いかけが、篠原判定以後、僕の中では繰り返されている。

 実は、そういうことを考える端緒は篠原以前にあった。滝本が金メダルを獲得した瞬間である。彼は、礼もせずにコーチに走り寄った。コーチはと言えば、「この馬鹿野郎」と一瞬の逡巡をみせつつも、一応抱き留め、それから畳の上へ追い返した。
 歓びの発露を責めるつもりは毛頭ない。だが、あの瞬間に、僕は「柔道はスポーツになったのだな」と感じたのだった。そして迎えた最重量級の決勝。不可解な判定に対しての解説者の不満に満ちた言葉を聞きながら、きっと抗議するのだろうと思ったら…という感じだった。

 もっともスポーツとして考えれば、タイム競技でない以上、レフリングによる運/不運は常につきまとう。サッカーのアメリカ対日本戦のレフリングもひどいものだった。柔道においては、実況中に解説者が「あれはおかしいですね」ということはしばしばだった。柔道の知識がない僕には、そのあたりの真偽はわからないが、まあ本家が言うのだから、きっとそうなのだろう…と思いながら、観戦した。そうした観戦がストレスのたまるものだったことは疑いようもない。
 でもスポーツというのはそういうものだ。誤審はつきもの。時には思惑が絡んだレフリングだって、あり得る…ということを、もし柔道をスポーツと考えるならば、関係者は認めるべきだろう。

 雑感をずらずらと…なんて言いながら、レフリング問題だけで、かなりの分量になってしまったので、最後に、心に残った言葉を。
 一つは高橋尚子。
「緊張というより集中してるという感じでした」
 かなりのプレッシャーだったでしょう? スタート前には緊張したのでは?というレポーターの問いかけに、少し考えて彼女が答えた言葉だった。
 もう一つは、源純夏。
「後ろに道ができていくということは素晴らしいこと。大きなことをしたと思う」
 自由形短距離で日本人女性として初めて決勝を泳いだ後の言葉だった。
 あともう一つは名前はわからないけど、解説者の方の言葉。
「もしもこれからオリンピックを目指したい人は、MTBをやってもらえればチャンスがあります。ぜひやってほしい」
 様々なステージとステータスが混在した競技会。だからオリンピックは面白いと思った次第。

 そんなわけでおよそ2週間のシドニー五輪も終了(閉会式改め閉会パーティでは、まだオーストラリアの歌手が歌っているけれど)。
 オリンピックのせいで?この2週間僕はずっとテレビの前に座り通し。ほとんど仕事をしなかった。そろそろやばい…ので頑張ります。