COLUMN



 ゴージャスな一週間〜世界チャンプ、中田、そして同窓会。(00.8.15)

 先週は、ものすごく贅沢な一週間を過ごした。
 まずWBA世界チャンピオン・畑山隆則の取材。これまでにも何人か「世界一」の人に取材したことがあるのだが、彼らに共通しているのは、彼らと会った後、俺が元気に、前向きに、ポジティブになってしまうということ。
 今回も京浜川崎ジムを出る時には、僕はやっぱりとてもよい精神状態になっていたわけで、それが彼らがもつオーラのようなものに触発された結果なのかどうかはわからないが、やっぱり世界一はすごいなぁと思った次第。
 それにしても、けだるそうに語っていた彼が、リングにあがった瞬間から、体中に一本ピーンと筋が通り、圧倒的な存在感を醸し出し、殺気を発散したのには驚いた。それにあのバネ、あのスピード。すごい、としか言いようがない。それはそれはあまりの美しさで、すっかり感動してしまった。

 木曜の夕方から金曜の午前にかけては、中田英寿の原稿に浸った。僕にとっては特別な対象である彼のことはこれまでにも色々な媒体に書かせてもらったし、仕事として以外にも随分たくさんの時間彼のことを考えてきた。
 残念ながら、ここのところあまりそういう機会がなかったのだが、今月は彼の原稿を2本書かせてもらうことになり、もともとあった思い入れを一度サラにして、過去の取材ノートやこれまでの記憶を辿り直して、もう一度再構成してみることにした。
 その作業はとっても大変だったけど、とってもとっても充実したもので、深い思い入れをもてる対象に出会えたこと、そして、それをマスターベーションではなく、社会的に放出できることの幸せを、改めて認識したのだった。

 そして、その後、金曜の午後には、俺にとってスペシャルな場所である三重県津市へ。新幹線と近鉄を乗り継いで、津へ近づいていくにつれて、ウキウキとドキドキで気分が落ち着かなくなり、懐かしさと不安との両方が込みあげてきたのだけど、不安の方はすっかり杞憂で、やさしさと暖かさと安心感に満ちた時間を過ごすことができた。
 高校の同窓会。太ったり、やせたりという体型的変化はあっても、少し話せば、せっかちさや勝ち気さやおとなしさ…は当時のままで、その人の良いところはもちろん、いま知り合ったのなら嫌なところと感じそうな部分でさえも、何だか微笑ましく、許せてしまった。許せてしまうどころか、そんなところに接して、嬉しくさえ感じてしまって、やっぱり子供の頃の友達は特別なんだなと、これまた再認識。
 過去へ戻ることがかなわないように、思い出をいまからもう一度作ることはできない。とすれば、こんなに良い思い出をもっていることは、ものすごく幸せなことなのだなぁ、と素直に思えたりもした。

 余談ながら、俺にとって初恋(ちょっと恥ずかしいですが)と言える人が、すでに3人の子持ちであるにもかかわらず、当時の何倍も美しくなっていて、まともに顔も見れないなんて、いまでは考えられない事態に、私は陥ってしまったりもした。
 しかも当時通りの素っ気なさもそのまま残っていて、それがまた35歳の僕を高校時代の僕にタイムスリップさせたりして。あれはほとんど反則でした。
 もちろん、もう二度と初恋をすることはできないわけで、そういう意味では、彼女は俺にとって一生初恋の人なんだなぁ…なんて、本人が知ったら鬱陶しがられそうなことを思ったりもした。

 その他にも、野球部の親友と深夜にグランドを訪れて、当時の思い出話と現在の話をしたり、「奥さんがお盆で実家に帰っているから大丈夫」という理由で泊めてもらった友達の家で深夜に懐かしい話とか仕事の話とか家庭の話とかしたり、友達3人とふらふら出歩いてファミレスに行ったり、亡くなった友達のお墓参りをしたり、百人超という大人数が集まった中学校の同窓会があったり、そこでも高校のそれと同じように太ったり、痩せたり、きれいになったりしているけど、結局当時と変わらない友達や先生とあれやこれやと話したり…。
 およそ10年ぶりの津での滞在時間、およそ40時間は、もう本当にゴージャスで、僕にとっては「日常/非日常」というようなレベルではないほどの、素晴らしい時間でした。

 おまけに東京への帰路は、埼玉にある奥さんの実家へ行く友達と一緒で、新幹線の車中には今回の同窓会を段取ってくれた友人から「まだ津におったらお茶でも飲もうと思って」という電話が入ったりもして、僕のハッピーな週末にはしっかりとエピローグまで。
 大学を横に出てから会社に入らず一人で仕事をしてきたこともあって(いまも猫と二人暮らしだし)、いわゆる同僚とか仲間とかという存在がいない僕にとって、そんなふうに特に用事もなく声をかけてくれる人は滅多にいないわけで、だからそんな電話一本が妙に嬉しかったりもするわけで、最後の最後まで、本当に幸せに満ちた一週間だった。

 もちろん、というか、お察しの通り、再び東京に戻ってきて、山手線に乗った頃から、徐々に胸には酸っぱいものが込み上げてきて、少しばかりさみしい気分になってしまったのだけど、それでも、あそこに、そして考えてみればあそこ以外にも、ああいう人たちがいるんだということを思い出と共に、思い出すことができたことで、ここ1年ばかり元気がなかった僕も、さすがに、もう一回頑張ってみるか、みたいな気持ちになれたのでした。

 以前よく東京出身者から「田舎があっていいね」なんて言われてたものですが、そのたびに「何言ってんだよ! 家賃だけでもう何千万払ってると思うんだ」なんて反論していた僕ですが、今回ばかりは「いいだろう?」と自慢したいくらい。
 そんなわけで、何だかすっかり日記のようになってしまいましたが(まあここではいつものことですが)あまりにも贅沢でゴージャスな「ゴールデンウィーク」だったので、我慢できなくて、ついヅラヅラと書いてしまいました。
 毎日暑いですが、お体を大切に。そして、みなさまも頑張ってください。