COLUMN

 [After 2001.9.11]
 テロから2ヶ月が経って。 01.11.20



 空爆のニュースは、ちょうど日本代表の取材で訪れていたサザンプトンで聞いた。WTCに飛行機が突っ込んでから1ヶ月弱のことだった。

 空爆の翌々日に僕はUKを離れたのだが、ヒースロー空港では特別なセキュリティチェックは受けなかった。通常と違うことと言えば、チェックイン時に簡単な問診を受けたくらい。それも「危険物をもっていませんか」「パッキングは自分でしましたか」といった形ばかりのものだった。
 それ以外は、普段と何らか変わりない搭乗手続きと出国手続きで、UKを離れて日本に戻ることができた。

 もっともアメリカ経由で帰った知人の話では、アメリカの空港ではチェックはかなり厳しかったらしい。「温度差」と言ってしまえばそれまでだが、少なくとも日本もロンドンの街中も似たようなもの、ということがわかった。

 アメリカがアフガンに対して反撃に出ることは想定内だったからそれ自体には驚かなかった。
 でも、その前後に起きた飛行機事故、空港での事故、さらにそれ以後、まるでリングのように続く事故だか事件だかわからない人が死ぬニュースにはさすがに平常心ではいられなかった。


 一体、世界はどうしてしまったのか。
 この連鎖は何なのか?

 小さな価値の対立が大きな事件へとつながる。大きな事件が価値観の違いを浮き彫りにする。
 とにかく、世界は敵意に満ちていく。

 おまけに、その間にアメリカだけではなく、いくつかの航空会社が潰れ、いくつかの航空会社が人員削減を発表した。日本でもJALJASの合併が表面化し、富士通やNTTでリストラが発表された。
 テロというフィジカルな衝撃の余波が、メンタルにボディブローのように効き始めたいま、経済的な危機感がさらなるインパクトを与えると…。
 さらに怖さが増す。


 何よりも一連の出来事の末に、アメリカという国に対しての信頼(心からの信頼)が、建前的にも、いまや世界中に存在しなくなったような気がして不安が募る。
 別にアメリカが世界の盟主である必要も、警察である必要もないのだが、少なくとも世界の中心的地位にいた国に、いまでは世界が政治的に従っているフリをしているだけというのがいかにも明らかで、そのことに恐怖を感じる。

 はっきり言ってしまえば、誰もアメリカを尊敬していないように僕のアンテナは告げている。

 もともとそうだったのかもしれない。
 しかし、これほど明らかに、本音の部分でアメリカへの敬意が失われたことを感じると、やはりどうにも落ち着かない。


 尊敬していないだけではない。世界はもしかしたらアメリカに対して、哀れみと滑稽さを感じてはいないか。
 そして、アメリカはそのことに気づいているのだろうか。
 一連の戦争が終結した後、世界に残るものが疑心と憐憫と諦観だけだったとしたら…。
 そう考えると僕は恐怖を感じるのだ。


 もしかするとアメリカに対して滑稽さと哀れみを感じているのは僕自身なのかもしれない。
 
P・マッカートニーの呼びかけで行われたNYでのコンサート。ステージの上で語られる美辞麗句。いや、本当に心から彼らはそう思っているのかもしれない。あれこそがいかにもアメリカ的なのかもしれない。

 でも、あのコンサート自体を中傷するつもりは毛頭ないが、どうにもこうにも偽善ぽくて、まるで日本人が日本人を揶揄する時に使う「本音と建前」のようなものを感じて僕は気持ちが悪かった。具がないというか…。
(友達とそんな話をしていて、つい口をついたフレーズは「アメリカって広告代理店みたいなんだよね」でした)。

 いずれにしても、コンサートで歌うスターと、遺影をかざし静かに追悼する観客を見ながらも、僕はアメリカ国内に600万人いるというイスラム教徒の胸の内を想像する。
 だからどう、というわけではなく、ただ想像する。


 WTCに旅客機が突っ込んでから、2ヶ月と少しが経った。
 その間にアメリカはアフガンを攻撃し、民間人を含めた多くの人々を殺傷した。その援助を受けて、またこの機に乗じてアフガンでは政変が起きた。
 しかし、アメリカがターゲットとしたはずのビンラディンはいまだに捕捉さえできていない。


 では、一体、いま起きていることは何なのだろう?
 どんな意味があるのか?


 誰が得して、誰が損しているのか。あるいは誰も損も得もせず、ただ商品や企画が右から左へ移動して金を生むように、ただ戦争が行われているだけなのだろうか。

 まだ、いまのところ、僕には何もわからない。この2ヶ月の意味がよくわからない。
 ただ、世界が疑心で満ちませんように、と祈る。



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