COLUMN

 [W杯旅日記 13]    ソウル−埼玉        02.6.26

 いま6月26日、深夜です。
 2泊3日でソウルへ行き、ドイツ対韓国を見て、成田空港から埼玉スタジアムへ直行して、ブラジル対トルコを取材して自宅に戻ったところ。

 この「旅」で韓国へ行くのは4度目。1ヶ月の間に、同じ国を4回も訪れるなんて、これまでもこれからもあるとは思えない。韓国のよいところも嫌なところも、まさに嫌というくらい味わった1ヶ月でしたが、今回はさらに少しディープでした。
 ディープの中身をあからさまにできないのが残念ではありますが、今回、僕は韓国という国について、これまでより深い理解を得られたような気がします。 もっとも「気がする」だけで、それを言葉にできるほどではないのですが。

 ただ、テレビで見て、僕が感激していた韓国国民の盛り上がりは、少し予想とは違っていました。ソウル市庁舎前をはじめ、大勢の人が集まり、真っ赤に染まっている場所へ行ってみたのですが、その大部分は十代の若者でした。
 空気としては、「Jリーグ開幕直後」の日本に似ていると思った(そんな古い話を持ち出さなくても、いま現在目の前の日本と言えばいいじゃないか!として指摘もあるかもしれませんが)。
 愛国心とか、国への誇りとか、というよりも、むしろ“ブーム”の色が強かったです。

 ただ、少し日本とは違うなと思ったのは、例えば市庁舎前はまさにビジネス街でもあり、繁華街でもあるので、当然普通に仕事しているビジネスマンも、たくさん通行しています。
 でも、あのあたりは早朝から場所取り(日本のお花見を想像してもらえるとわかりやすいと思います)が始まり、昼ごろにはもはや歩くことも難しいような状況になってしまっていて、僕も普段なら5分で歩けるような距離を、30分、いや小1時間かけて進むというような状況でした。
 もしもあそこが日本なら、ビジネスマンの人が怒鳴ったり、邪魔者扱いをすると思います。でも誰も文句を言わない。いかに国籍が違うとはいえ、あの暑い午後にネクタイを締めて働いている営業マンのような方からすれば、あの群集はうっとおしいはずなのに。
 もちろん、おまわりさんもたくさん立ってはいるけれど、特別に取り締まる様子はない。
 その理由が、「韓国代表だから」なのかどうかはわからないけど、僕にとってはかなり不思議な状況でした。
 それにしても、Be the REDS のTシャツは本当にすごいです。理屈ぬきですごい。本当に韓国の景色は、真っ赤でした。

 さて試合に関して言えば、ソウルも埼玉も、ものすごく厳格に笛が吹かれていた。ものすごく厳格に吹くぞ、とレフリーが意識しているのが、こちらに伝わってくるくらいに厳格だった。
 日本では、レフリングが偏り過ぎ⇒韓国が裏で何かしたに違いない⇒韓国はひどい国だ、という論調がネットで徘徊しているとのこと。中には目を覆いたくなるような書き込み(誹謗・中傷・差別など)もあるときく。
 しかも、まだその先があって、⇒そのことを報じない日本のマスコミはけしからん、という流れにもなっているらしい。

 でも、どうなのだろう。レフリングが偏っていることについては、僕もこれまでTVを見ながら「おい!」と声を出すような場面もありました。
 でも、少なくとも僕は、韓国がレフリーを買収した、という証拠は何ももっていないし、そんなことがあったかどうかを語れるはずもない。
 レフリングが偏っていたことは(少なくとも僕の目には)明らかだと思うけれど、だからと言って「買収云々」については何とも言えない。
 証拠もないのに報道などしていいはずもなく、その意味で、日本のメディアが報じないのは当然だと思います。

 ちなみに僕のもとへも批判(これはいい)、非難(嬉しくはないが許容する)、中傷(?)、さらには脅迫(!)のメールが届いていて、その中には「韓国がレフリーを勝ったのは明らかだと僕は断言できる」といったものもあったが、もしも「明らか」だと「断言」できる証拠を持っているのであれば、僕よりも大マスコミへ、ぜひ。
 証拠があれば、それは大スクープなのですから、メディアは喜んで報じると思います。

 まあマスコミ批判について、僕が何か言うと、必ずまた糾弾されるので、あまり書きたくないのですが、少なくともフリーランスという立場で、マスコミの中ではかなり虐げられている(現場でも、それ以前の取材できるかどうかの時点から)僕からみても、日本のマスコミはかなりおかしいところがあります。時々腹立たしい気持ちにさえなる。実際、知り合いの記者に怒鳴ってしまうこともある。
 でも、僕がマスコミはおかしいと、外に向かっていうのは、会社員の人が自分の会社や上司を悪く言う(「うちの会社はさぁ」とか「上司がダメでさ」などという言葉を平気で僕に言う編集者がいるが、申し訳ないが、あなたはその会社から給料をもらっているのだし、僕からみればあなたはその会社の名刺で僕に会いに来ているわけで、そんなひどい会社と仕事しろというわけ? そもそもあなたはなんでその会社にいるんだ? と甚だ不愉快になってしまう)のと同じ(ではないが、似たような構図)で、男としてかっこよくないと思うので、できればそんなことは外に向かっては言いたくない。
 もし、言うならば内に向かって言うべきなのだが、吹けば飛ぶような、ペンの日雇い労働者なので…。でも頑張ります。

 マスコミについてはさておくとしても、レフリングがひどいからといって韓国の選手たちが貶められることでは絶対にないし、韓国という国と韓国人が貶められることでもないと僕は思います。
 サッカーについて、だとか、ナショナリズムについて、だとかは、色々な意見があっていいと思いますが。
 でも、そんな本当に議論でき、また議論すべきことが、一部の差別・脅迫といったメールを送る人々がいることで、議論もできなくなってしまうのは、とても残念に思います。

 とにかく僕は当サイトの「MAIL TO」と取らざるをえなくなったし、それによって、これまでサイトを見て、様々な意見(賛成も反対も)を寄せてくれていた人々との接点もなくなってしまった。
 そのことを本当に本当に残念に思う。

 結局、サッカーの話をほとんど書けませんでした。トルコが見せてくれた素晴らしいサッカーについて、いっぱい語りたいことがあったというのに。




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