COLUMN

 高校生との往復メール<8> 川端→Yくん    03.8.27

 夏休みもそろそろ終わりですね。楽しく過ごせましたでしょうか?
 僕の高校1年生の夏休みは、毎日毎日毎日…野球ばかりやっていました。といってもまだ1年生で体もできてないし、練習がきつくて、朝起きるたびに強い日差しと入道雲の空を見て、あ〜今日も暑そうだなあ、練習嫌だなあ… そんな毎日でした。照りつける太陽と、その照り返しで真っ白に光るグランドと、けだるさと、それが僕の高校1年生の夏休みの記憶。

 ま、きれいなことを言えば、練習後に頭から水をかぶった時の爽快さは忘れられない(当時は坊主でしたから)…なんて言えなくもないけど、そんなことより練習のきつさばかりが印象に残ってます。
 というわけで、少し時間が経ってしまいましたが、返信。

 川端さんの「冒険者たち」を読ませていただきました。これを読んで川端さんは川口選手と親しい印象を受けたのですが、それはやはりライターという職業を通して親しくなれたのでしょうか?(N)

 
親しいかどうは別にして、ライターという職業を通して、知りあったことは事実です。彼がマリノスに入団した頃に取材で知りあって、その後もしばしば取材で顔を会わせ、気が合ったので、一緒に食事をしたりするようにもなりました。彼の家にも行ったこともあるし、サッカーとは関係のない話(Hな話とか恋愛とか結婚とか)をしたこともあります。

 
ただ、これはとても微妙で、しかも大切なことなのですが、僕(ライター)は取材者で、彼(選手)は被取材者です。このあたりの原則というかモラルをなくしてしまうと、それはジャーナリストして大きな問題だと僕は思っています。
 
本来、選手やタレント(被取材者)と親しいことは、取材者にとって何の自慢にもなりません。むしろ問題でさえあるはずです。なぜならニュートラルな立場で原稿を書いたり、伝えることができなくなりますから。

 ちょっと想像してみてほしいのですが、もしもみなさんが新聞やテレビで知った事件のことを考えて何か書くとします。その場合に、みなさんはきっと客観的に考えて、判断して、書くことができると思います。

 
でも、それが自分の知っている人、友達とか友達のお父さんとか、だった場合には、客観的に書くことは難しいはずです。どんなに客観的に書こうと努力しても、そこには友情や同情が必ず入ってしまう。なぜなら、そもそもあなたは友達とか知人の味方だからです。味方や身内を悪く言うことはできない。人間の心情とはそういうものです(だからこそ、友達や身内というのはありがたいものでもあります)。

 
でもジャーナリストして考えた場合、それはどうなのでしょうか。はじめから被取材者の味方という立場に立っている人に、物事をニュートラルに判断したり、伝えたりすることができるはずはありません。
 
だから、選手と親しいことはライターにとって何の自慢にもならない、と僕は思っているのです。

 
でも、その一方で、親しいからこそ理解できることもあります。親しいからこそ本音が聞けるという部分もあります。
 
ちなみに現在、スポーツの雑誌や本などではそんな「選手が語る本音」を書いた記事が多い。読者もそれを知りたいと思っているし、だから書き手もそれを聞き出そうと努力するし、雑誌もそれを掲載します。
 
そんないまのスポーツマスコミの主流がいいことなのか/悪いことなのか、僕にはわかりません。その選手の本当の気持ちを知らないままに原稿を書くのもどうなんだろう、と思うし、選手の味方になって彼の主張ばかりを書くのもやはりおかしいように思います。

 
いずれにしても取材者であるという自覚、取材者と被取材者との距離感、これはマスコミの仕事をする者にとって、永遠につきまとうテーマです。何が正しいとは言いませんが、いつも「俺の立っている場所は間違っていないだろうか」という自問自答は必要だと思います。
 
そんな大切なことが忘れられつつある今日だからこそ、これから目指すみなさんには強く意識してほしいと思います。

 それと、川端さんはどのような意図で私たちにあれらの質問をお聞きになられたのでしょうか?よろしければ教えてください。(Y)


 
大した意図はありません。単純に「どうしてライターになりたいと思ったのだろう?」と疑問に思ったからです。
 保護者の職業を尋ねたのは、高校生にとっての「社会」は学校と家庭と地域くらいの範囲だと思ったからです。だとすれば、職業として具体的に知っているのは、教師とお父さん(お母さん)の仕事くらいかなあと。

 
例えば「お父さんがライター」→「僕もお父さんのようになりたい」なら、とてもわかりやすい。でも、そうじゃないのに(ライターという職業を知らないのに)→ライターになりたい、というからには、何か理由があるだろうと思ったからです。
 
で、その理由は何なのだろう、と思って質問してみました。

 あ、もちろん、その理由なんて何でもいいのです。テレビで見たり、本で読んだりして、かっこよかったからでもいいし、本が、スポーツが好きだから、でもいい。大事なことは、夢を目標に変えることができるかどうか、だと思います。あるいは、思いつきを夢に、夢を目標に、変えることができるかどうか。

 
思いつきを夢にまで育てることができて、それをずっと思い続けることができれば、大抵その夢は叶います。ずっと思い続けていれば、夢は目標に変わるし、そうなれば目標を実現するためにやらなければならないことも、はっきりとしてきますから。要は、本気かどうか、それだけだと僕は思っています。
 
頑張ってください。




about KNET
川端康生の個人サイトです。
KNETについて
History
Books&Movies
Bellmare
Column
Works
I'm here

Mail to