COLUMN

 [After 2001.9.11E]
 テロから2年3ヶ月が経って。             03.12.5


 2003年12月です。
 昨日、自衛隊のイラク派遣が閣議了解されました。
 どこが始まりで、何が根本だったのか――がわからなくなってしまうほど、世界も日本も先へ先へと進んでいきます。
 ちょっと前の過去に議論されていたことが、ちょっと後には現実となって、なし崩し的に許容されていく。

 許容など誰もしていないのかもしれない。
 でも、どんどん進んでいく現実のスピードに、議論も思考も追いつけない。
 判断を下せないままに次の現実が目前に迫ってきて、ちょっと前の過去の大事な問題について話をする機会はもうなくなってしまう。

 いくつかあった分かれ道で「はてどっちへ進もうか」と立ち止まりかけたところで、「迷ってる暇はないぞ」と背中を押され、はっきりとした意志もないままにまた歩き始め、そして次の分かれ道でもまた同じようにちょっとだけ立ち止まり、よくわからないまま進んでいくしかない。

 最初の分かれ道がどこだったのか。振り返ってみても、もはやすっかり遥か彼方で、はっきり見定めることもできません。
 それどころか、また次の現実――分かれ道――が迫ってくる。

 いつか気がついたら、思いがけない場所に辿りついていた…。
 そして、過去を振り返ってみても、一つ一つの分かれ道でしっかり考え、迷い、その末に判断し、決断していないから、省みることもできないし、責任感も持てない…。

 そんな思考停止による無自覚で無責任な道の歩み方は、僕はしたくないと思っています。
 時代がどんなにハイスピードで進んでも、大事なことはちゃんと立ち止まって、ちゃんと迷って、ちゃんと決断したい。
 そんなふうに思います。

 気になるのは誰も――内閣も政府も国民も――時代のスピードについていけていないことと、それなのに前へ進んでいることです。
 どこかで戻ろうと思っても、一つ一つの分かれ道をしっかり記憶に刻印できていないから、きっと戻れない。
 不安なのは、ヘンデルとグレーテルが落としていったパンのように、不確実な道標しか僕たちが残していないことです。


 我々は自分たちの生きている現在と決して完全に同時代にいることはない。
 歴史は仮面をつけて進行する。歴史は前の場面の仮面をつけたまあ次の場面に登場するのだが、そうなると我々はもうその芝居がさっぱりわからなくなる。
 幕が上がるたびに、話の糸口を辿りなおさなければならないのだ。
                ――レジス・ドブレ「革命の中の革命」




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