それでも、そして、だからこそ僕たちはこの道を行く

ボールがゴールネットに突き刺さる。
歓声があっち側のスタンドからあがる。
相手チームの選手たちが小躍りし、その向こうで僕たちのゴールキーパーが土を噛んでいる。
悔しい。そんな時、僕たちは本当に悔しい。

長いホイッスルが鳴り、スコアボードを見上げる。
「0」。今日もまた彼のゴールは決まらなかった。あんなに声を嗄らして応援したのに、両手を握り締めて祈ったのに。
やるせない。どうしようもないほど、やるせない。

彼の名前がボードにない。ピッチを一生懸命、何度も何度も探してみたけど、やっぱり彼の姿はない。
ケガでもしたのだろうか。それともポジションを失ってしまったのか。
落ち込んではいないだろうか。投げ出したりしないだろうか。
励ましてあげたい。でも僕にしてあげられることなんて何もない。
切ない。彼を想えば想うほど、切ない。

「右だ!」。名前も知らない隣の誰かが叫んだ。
まるで、その声が聞こえたかのように、パスが右サイドへとつながれ、ゴール前に送り込まれる。
周りのみんなが立ち上がる。つられて僕も立ち上がる。
ゴールマウスにボールが転がり込んだ。叫んでいる。みんなが叫んでいる。
僕も叫んでいる。
永遠。いまがいつで、ここがどこでもいいほどの、永遠の瞬間。

選手たちが僕たちに向かって駆けてくる。
ゴールを決めた彼も、新人もベテランも、とにかくみんなが飛び跳ねながら駆けてくる。
僕たちもみんな飛び跳ねている。選手たちも僕も隣の誰かも、みんな一緒に飛び跳ねている。
羽ばたく。青空を突き抜けて、時間も突き抜けて、どこまでも遠くへ、どこまでも未来へ、みんなと一緒に羽ばたいていける気がした。

シーズンの終わりを告げる長い長いホイッスルが鳴る。彼らを追いかけた1年間の旅の記憶が胸に押し寄せてくる。その前の年も、そのまた前の年も、同じように彼らを追いかけ、同じように聞いたホイッスルが蘇る。
悔しかったり、やるせなかったり、切なかったり、嬉しかったり、心強かったり、そんなすべてが蘇ってくる。
果てしない。気が遠くなるほど、果てしない。

果てしなく続く、喜びと哀しみ、絶叫と悲鳴、出会いと別れ。
それでも新しいシーズンが始まれば、やっぱり僕たちは彼らを追いかけていくのだ。
今年もまた――。


*本稿は「湘南ベルマーレ ハンドブック2004」に掲載されたものです。