[After 9.11]H
4月10日午前6時に思う想うこと          04.4.10


 ちょうど自分の考えをまとめようと思っていたところに「そろそろ次のコラムを……」という連絡を受けたので、いまこの時点での僕の考えをアップすることにします。
 事の性格上、現在時刻を明らかにしておきます。現在4月10日午前6時すぎです。

 実を言うと、この2年半の間、いつも「そもそも……」と考え始めて、壁にぶつかってきました。
 目の前で事態が急変します。それも大抵は悪い方向に変わってしまう。
 そのたびに「そもそもこんなことになったのは……」と少し前の過去に遡って考え始めて、でもその「少し前の過去」に陥ってしまったのは、それよりもさらに少し前の過去の判断ミスがあったからで……と考えているうちに、また次の(やっぱりよくない)事態が起きてしまって、本当は落ち着いてちゃんと考え直さなければならない「そもそも」に辿りつく余裕もなく、目の前の事態を受ける止めることでいつも精一杯になってしまう。
 この2年半の間、ずっとそんな状態で過ごしてきたように思います。

 そして、結局「そもそも」についてきちんと考えないままに、こんな事態に直面してしまった。
 期限は「3日」しかありません。
 いまこの時点ではすでに1日が経過しているから、あと2日しかない。

 1年前、アメリカが先制攻撃を仕掛けると予告した際に、イラクに与えた期限は「48時間」でした。それよりは少し長い。
 少し長いし、軍隊を(他国に派遣するのではなく)自国へ帰国させればよいのに、それさえもできない。それが僕たちの国の現在の姿です。

 でも、もしも「3日」後にミサイルで攻撃するぞ、と脅されているとしたら、どうでしょうか。
 たぶん日本人はパニックになる。それはそうです、僕たちの家に向かって空からミサイルが飛んできて、家を壊すのです。
 そればかりか、僕も、あなたも、もしかすると死ぬかもしれない。パニックになるだけでなく、「3日」と待たずに、とっとと自衛隊を撤退させるはずです。
 アメリカがイラク(の人々)に突きつけたのは、そういう期限でした。まさしくDEAD LINEだった。

 でも、いま日本が(日本政府であり、日本国民が)突きつけられている「3日」はそういう期限ではない。僕たちの家に向かってロケットは飛んでこないし、国内にいる僕たちが殺されることもない。
 だから、「撤退はありえない」と言い続けることができる。「テロに屈しない」とか、「全力を尽くす」とか言いながら時間を消費していくことができる。

 だけど僕は「ちょっとそれはおかしいのではないか」と思います。
「そもそも」イラクに自衛隊を派遣したのは「国益」にかなうという理由でした。世界の各国が手を引いていく中で、国際・国内世論に抗して、日本がアメリカに追随するのは「それが日本の国益にかなうからです」と総理大臣は明言していた。

 では、「国益」とは何か。益という以上は利益なのだと思います。お金。
 僕はお金持ちになること、経済的に豊かになることを否定しません。日本が経済的に豊かな国だからこそ、僕たち国民はこんなにも豊かな生活を送ることができている。
 だから、国益を守ろうとすることも悪いことだとは思わない。

 では、その国益という利益は誰のためにあるのか。利益を享受するのは誰か?
 答えは明らかです。国民です。つまり「国益」とは、国という単位(あるいは政府)のための利益ではなくて、国民のための利益でなければならない。

 ところが、僕たちの政府は――「3日」という期限付きで、「国民」の命が危険に晒されているのに、「国益」のために派遣した自衛隊を撤退させることができない――と言っています。
 これではまるで「国民」よりも「国益」の方が大切であるかのように聞こえる。
 国民が死んでしまっては、せっかく国益を手に入れたって、それを享受する人がいなくなってしまいます。
 まさか「わずか3人だから」ということではないでしょう。まさか「僕(わたし)じゃないから」でもないはずです。
 そんなことを考えている人はいない、そう僕は信じます。

 物事には「頭」で考えなければいけないことと、「心」で感じなければならないことがあると思います。損得や理屈は「頭」で考えるべきことだけれど、愛情や幸福は「頭」で考えたってわからない。
 頭を絞って一生懸命に「国益」を得ようとすることも大切な仕事です。
 でも、そんなものは全部うっちゃって、損得も理屈も投げ打って、行動すべきときもあると思う。でなければ、愛情も信頼も得られないし、幸福だって手に入らない。

 この2年半、「そもそも」とずっと考えてきて、正直ちょっと疲れました。
 もう「そもそも」はいいから、ここらでリセットしたいというのが本音です。
 これまでの色々なことは(正しいことも失敗も)水に流すから、いまこの瞬間にリセットボタンを押して、一度御破算にして、ここからちゃんと歩み直していきたい。心からそう願っています。

「いま」はそれができる時だと思います。ここで一旦、自衛隊を帰国させれば、チャラな状態に戻すことができる。何より国民の命が守られる。
 それから信頼と愛情を築きなおして、もう一度、きちんと考えて、議論して、歩き始めればいい。

 そのために国益を損ねたとしても、僕はその「痛み」を享受するのは嫌じゃない。構造改革の痛みよりも、国民の命のための痛みを僕は迷うことなく選びます。
(今回はベルマーレもサッカーも出てこなくて、すみません。今日は川崎フロンターレ戦ですね。天気よさそう。いいゲームになればいいですね)



*このコラムは湘南ベルマーレの公式HP内「風の先の終わり、海の波の続き」に掲載したものです。


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