『星屑たち〜それからのアトランタ組物語』
2005年1月刊/双葉社/1600円
単行本が出版になりましたので、簡単にご紹介させていただきます。
タイトルの通り、本書はアトランタ五輪代表の「その後」を追ったドキュメンタリーです。前園、城、中田といった選手たちだけでなく、西野監督をはじめとしたスタッフにも触れています。
とはいえ、本書において僕が記録しておきたかったのは、選手たちのドラマだけでなく、彼らの時代――つまりJリーグ創設をきっかけに日本サッカーが奇跡的な成功と発展を遂げた10余年――について、でした。
サッカーがブームとなり、選手たちがあたかもタレントのように扱われた時代、アマチュアからプロへと移行する過程で様々な軋轢が生じた時代、しかしながら人気の上昇によってサッカー界に豊富な資金が流れ込み、それを原資として強化・育成に拍車がかかり、急激なレベルアップを遂げた時代、についてです。
その意味で、本書の主人公はあくまでも「彼ら」ですが、同じ時代を生きた「僕たち」の記録でもあると考えています。
よきにつけ悪しきにつけ刺激的だったあの時代を共に生きたサッカーファンの一人として、読んでいただければ幸いです。
ちなみに僕自身は、昨年秋に出版した『日韓ワールドカップの覚書』(講談社)と今回の『星屑たち』をセットでとらえています。80年代末から世紀をまたいで21世紀初頭までの日本サッカーについて、『……覚書』でマネジメント部分を、『星屑たち』でピッチの中を描くことで、「ひとつの時代」を記録したつもり。
それらを経て、これから始まる(すでに始まっている)新しい時代について、ちょうど今月から連載がスタートした『誰がパスをつなぐのか』(ワールドサッカーグラフィック誌)で考えてみようと思っています。
『星屑たち』もくじ
プロローグ
1996年クアラルンプール 世界の扉が開いた夜
1992年クアラルンプール 平成サッカーキッズたち
1996年マイアミ 終戦の夜
1998年フランス 彼らの彷徨
2002年日本 祭のあと
2004年日本 ひとつの時代の終わり
ロスタイムそれぞれの場所 ゲームは終わらない
9年目のモノローグ
エピローグ
あとがき
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