サッカーメディア時評                   06.3.10

●第3期創刊ラッシュ
 書店の棚が賑やかだ。「サッカーJ+」、「サッカーN+」(エンターブレイン)、「STAR SOCCER」(楽天/扶桑社)、「中学サッカー小僧」(白夜書房)、それに本誌の兄弟誌「Football LIFE」などサッカー誌が続々創刊。
 フットサル系、フリースタイル系、芸能人フットサル系(?)も加わり、書棚に占める“サッカー率”は相当に高い。Jリーグ創設直後の第1期、フランス・ワールドカップ前後の第2期に続く、第3期創刊ラッシュと言ってもいい勢いだ(創刊の噂はまだある)。

 ワールドカップバブルを当て込んだもの? いやいや、そうではなさそうだ。新雑誌は、「サッカーJ+」=Jリーグ(あるいはJクラブ)、「STAR SOCCER」=(どこか西欧の匂いのする)カルチャー、「中学サッカー小僧」=誌名の通り、育成年代のプレーヤー向け、「Football LIFE」=(日本と世界の)リビングフットボール、といずれも作り手の思想と意志が感じられる雑誌ばかり。むしろ地に足付いた創刊ラッシュであるように僕には見える。
 そして、これほどバラエティに富む雑誌群がほぼ同時に世に出るという事実こそ、フットボールの豊穣さを示すものであり、サッカーが日本に根付きつつある証だと思えるのである。

 あえてベクトルを探すとすれば、それはJ回帰だろう。ディスカバー・ジャパンである。
 その意味で、クラブごと30パターンの表紙を作った「サッカーJ+」創刊号は象徴的だった。「サッカーマガジン」(ベースボールマガジン社)、「サッカーダイジェスト」(日本スポーツ企画出版社)でさえ扱いきれないラテラルな地平の広がりを感じる事件であった。
 それは「朝日新聞」(2月26日朝刊)が書評欄で「サッカー」を取り上げる一方で、サッカー専門新聞「エルゴラッソ」(スクワッド)が200号を超え、宅配エリアをJクラブの街を中心に伸ばしているという事実にも伺える。
 そんな極めて「サッカー的」な世界がいま現出しようとしているのだ。

●失格フリーライターの憂い言
 潮の干満が速い。報道が追いつく暇がないほど現実の進行は早く、しかも波数も多い。
 ついさっき大きな活字で報じられたばかりのニュースが、あっという間に次のニュースに飲み込まれ、海の底に沈殿していく。
 耐震偽装、BSE、ライブドア、防衛施設庁談合と次々と押し寄せた大波に金切り声を張り上げている間に、自衛隊がイラクに、拉致家族が北朝鮮に身動きできずにいまも留まっていることをつい忘れてしまいそうになる。

 不思議なのは潮が引いた後に、そこに積み重なっているはずの現実(の残骸)が見当たらないことだ。これほどの速さで満ち干きを繰り返しながら、何もかもが浄化(消化)されているはずはないのに。だが、見当たらない。

 残骸(あるいは亡霊)を掘り起こし、蘇らせるのは元来スキャンダリズムの得意技だった。事実ではなく真実を生々しい感触とともに浮かび上がらせるその確信犯的技巧に、かつてのトップ屋やフリーライターは存在証明を遺そうとした。

 いや、かつての……とは限らない。永田メール騒動真っ只中、某週刊誌の記者から電話がかかってきた。
「○○○(某Jクラブ)とライブドアとの関係について何か知らない?」。
 嗚呼。我ながら情けない。尋ねられるまですっかり忘れていた。ホリエモンが買収に乗り出すとか乗り出さないとか、あれはプロ野球騒動の最中だから2004年秋。まだ1年半しか経っていない。

 それでもサッカー業界の住人の面目は保たねばならない。
「あれは実現しなかった話だからね。その後運営会社も変わったし」。
 だが、返す刀で再び斬られた。
「株主に○○○○が入っているという話を小耳にはさんだんだけど、どうなの?」。
……。ごめん、知らん。

 気がつけば、かつての志も心意気も海の底。アンテナさえも感度不良に陥っている。世間の大事件を河岸に追いやり、大ネタへの可能性を想像することすらできない。フリーライター失格である(ちなみに件の週刊誌記者の想像力もボツであったようだ。前運営会社時代のアレコレはグレーの部分もあったらしいが、いまはシロ。念のため)。

 自分のことは棚に上げて言い切ってしまえば、憂うべきは「共生」という大義名分の下、取材者と被取材者が“仲良しグループ”に甘んじている現状だ。「所詮、業界誌」と揶揄されても反論しにくい状況ができあがってしまっている。
 このままでは「サッカー」外のメディアが抜いたスクープを後追いする、なんて情けない事態も招きかねない(田原総一郎責任編集「オフレコ」(vol.2・アスコム)の「サッカー記者匿名座談会・ジーコジャパンの内幕」は失笑ものだったけど)。
 ましてや他メディアならまだしも、ネットの個人サイトに抜かれたのでは目も当てられない……と書いて「きっこの日記」に思い至った。
 彼女(?)がただのスタイリストなのかどうかは知らないが耐震偽装、BSEと大マスコミの鼻を明かすスクープを連発した「きっこ」に喝采を叫んでいる場合ではないのである、報道でメシを食っている我々は。

 なので、せめて意地の一太刀。もうすぐ改選の次期チェアマン。○○専務の内部昇格で決まりらしいよ。専務には○○○の○○社長。となると、むしろ気になるのは○○○の今後だと思う今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか?……と呟いておく。



*本稿は「フットボールライフJr」に掲載されたものです。