スポーツ界はコンサバ傾向                  06.4.4

 開幕から1ヶ月が経った。
 予想していた通り、浦和レッズが強い。「強い」というより、スゴイとかヤバイとか言った方がいいかもしれない。ワシントン、ポンテ、小野、三都主、長谷部、山田、坪井、闘莉王……。
 わかっていたこととはいえ、戦力の充実ぶりはちょっと次元が違う感じ。第5節、横浜F・マリノスとの無敗対決も3対1のスコア以上の完勝だった。
 しかも、まだ田中達、黒部、永井、相馬らが控えているというのだから、「今シーズンはもうレッズで決まり」なんて溜息交じりの呟きがプレスルームのあちこちから漏れ聞こえたのもうなずける。
 もちろん長いシーズンには山も谷もあるに違いないが、今季のJリーグの焦点はずばり「ストップ・ザ・レッズ」に絞られたと言っても過言ではないだろう。

 そのレッズの得点源はワシントン。御存知の通り、昨年は東京Vで活躍したストライカーだ。
 彼のようにJリーグ内で動いた外国人選手が今季は目立つ。早くもゴールを量産しているG大阪のマグノ・アウベスは大分から、昇格初年度で健闘している甲府のビジュも鳥栖からの移籍である。

 これに過去にJリーグでプレーしていて一旦離日したものの再び舞い戻ってきた選手たち、いわば“出戻り組”も加えればその数は相当なものになる。
 昨シーズン途中まで名古屋にいた横浜FMのマルケスや広島のウエズレイ、さらに東京Vのバジーリオは以前柏に在籍していたし、湘南にいたっては新外国人3人すべてが出戻り組だ。
 そういえば先ごろバロンも神戸に加入した。甲府、市原、清水、C大阪、鹿島、仙台とチームを移りながらJリーグで10年プレーして、このオフにブラジルへ帰国したばかりだったが、再び日本に呼び戻された格好である。

 こうした流れの背景には、かつての手痛い失敗――大枚はたいてビッグネームを獲得してみたけれど……の記憶があるのだろう。プレースタイルや順応性のみならず人間性も含めて、すでに日本で実績を残している選手ならリスクは小さい。

 極めて堅実、でもどこかコンサバな匂いも……と考えていたら、もう一つのボールゲーム、プロ野球でも似たような現象が起きていることに気づいた。
 チャレンジが礼賛される一方で、現実にはリスクヘッジが頭を離れない、いかにも日本の内実を象徴しているようでビミョウな気分になってしまった。


*この原稿は「VS」に掲載されたものです。