取材ノート(浦和×大宮) ――誰がパスをつなぐのか(クラブ編) 06.2.1

 インタビューについていくつか補足しておきたい。
 まず「浦和レッズの親会社からの自立」について。これは三菱自動車との損失補填契約を解除したことを指している。
 損失補填契約とは文字通り、赤字を補填する約束だ。つまり子会社の赤字を親会社が穴埋めするということ。企業スポーツからの決別を宣言して旗揚げしたJリーグだが、現実にはいまなお多くのクラブが、このシステムによって経営を維持している。
 言い換えれば、親会社のないクラブの経営規模こそが、Jリーグの“実力”ということである。その意味で、自立して70億円を稼ぎ出す浦和レッズの実力は図抜けている。

 大宮アルディージャのインタビュー中で、何度かNTTについて触れたのもこれと関わりがある。
 Jクラブの収益は、チケット(入場料)、スポンサー(広告料)、マーチャンダイズ(グッズ売上など)、それにリーグ分配金(テレビ放映権料など)が柱なっているが、その最大の指標となる入場料収入だけを比較すれば、アルディージャのそれはJ2のコンサドーレ札幌(4億円)、ベガルタ仙台(6億5000万円)をも下回る。
 にもかかわらずアルディージャが現状規模(年間予算22億円。2005年度実績。以下同じ)で運営できているのは、ストレートに言えば、NTTの援助があるからに他ならない。

 ……とここまでの文脈を辿ってくれば、あたかも僕が「企業スポーツ」を(つまり大宮アルディージャを)糾弾しているように読めるかもしれない。だが、そうではない。
 実を言えば、ここ数年僕は「企業スポーツ=悪」という、いまや常識化しつつある意見に同調できなくなっているのである。
 例えば横浜FC。市民クラブとして旗揚げし、しかしJ2下位に低迷していた横浜FCがJ1昇格を果たすことができたのは新たな親会社が登場したからではないか。躍進を陰で支えたのは紛れもなく「企業」だったはずだ。無論、レオックが永続的に支援を継続できるかどうかはわからないが、チームを勝利に導き、サポーターに歓喜をもたらした彼らを悪者扱いする気には、少なくとも僕はなれない。

 順位や成績だけではない。親会社のないクラブの中には練習場さえままならないチームが少なくない。高校、大学と学校のグランドでプレーし、ようやくJリーガーになってみたら練習場のないチームだった、なんて悪い冗談のような現実がある。
 一方でJFLの企業チームに練習場のないところなどない。24時間使用できるグランドがあって、もちろん合宿所も備えている。大きな企業になれば、各事業所や工場ごとにグランドを保有していることも珍しくない。
 つまり環境や待遇面においても、Jリーグは企業スポーツを上回れないでいるのだ(そういえば日本リーグ時代の元選手が「プロになって環境がよくなったと言うけど、そうじゃないチームも多いよ。少なくとも当時は練習場は確実にあったから」と苦笑していたことがある)。

 もちろん企業スポーツへの回帰を願っているわけではない。レッズとは比べようもないが自立し、未来を夢見ながら小さな身の丈で懸命にもがいているクラブにこそ、「新たなスポーツ文化創造」の可能性を見る。
 だが、現実から目を逸らし(あるいは、そもそも見ようもせず)、「企業スポーツ=悪」と決め込んでしまう無自覚な姿勢には警鐘を鳴らしておきたいのだ。

 色んなクラブがあっていい。オプションの一つとして、まだしばらくは「企業スポーツ」もアリだと思う。
 そして、少しずつ企業色が薄まり、気がつけばホームタウン(自治体と市民と地元企業)が支えるクラブになっていた、という流れが理想だ――と結論を書いてみて、要するにこれってJリーグ創設時の青写真じゃん、と気づいた。あの頃は「10年後には……」という予定だったけれど。
 15年目のJリーグが始まる。僕たちはまだスタート地点からそう離れていないのかもしれない。



*本稿は「サッカーJ+」に掲載されたものです。