「社長ヤメロ!」と言うけれど……。             07.10.30

 もはや見馴れた光景ではあった。
「サカモトやめろ」
 三ツ沢で、横浜FCの坂本寿夫社長に猛烈なブーイングが浴びせられたのだ。
 降格と最下位。やるせなさはよくわかる。憤りの矛先をクラブ幹部に向けたくなるのもわかる気がする。
 おまけにサポーターの気持ちを逆撫でするような発言もあったことで、「やめろ」コールに熱がこもった面もあったのだろう。

 ちなみに僕自身は坂本社長とは面識もないし、人柄も知らない。実際にクラブ内でどうような権限を持ち、どのような仕事をしているかも知らないから、その能力について評価する材料をまったく持っていない。
 だから「サカモトやめろ」が正しいのかどうか判断できない(つまり、坂本社長を辞めさせることで横浜FCが強くなるのかどうか、の判断がつかない)。
 でも、毎年この時期になると耳にする「社長ヤメロ」の大合唱には、いつも若干の違和感を感じてしまう。聞きながら不思議な気分になるといった方がいいだろうか。

 言うまでもなく、ピッチ上での敗戦の直接的な責任は、社長よりも監督に、監督よりも選手にあるに決まっている。社長がプレーするわけではないし、社長がメンバーや戦術を決めたりするわけではない。
 社長の仕事は経営で、Jクラブの場合それは「金の工面をする」役目と言っていい。
 だから経営上で不手際があったときに「ヤメロ」コールが巻き起こるのであれば理解できる。
でも、多くの場合チームの成績不振に対して「社長ヤメロ」とサポーターは叫ぶ。
 その因果関係が、僕にはよくわからないのである。

 想像するに、<社長=偉い人=権力者>といった固定観念が、サポーターの間にあるのではないだろうか。
 だとすれば、それは正しいとは言えない。
 親会社のあるクラブの場合、社長といっても子会社(グループ会社)への出向者にすぎない(「すぎない」というのは少し言い過ぎかもしれないが)。
 わかりやすく言えば、親会社に呼びつけられて「おまえのところはいつまで赤字を垂れ流しているんだ。来年からは予算を絞るぞ」と怒られたりする立場である。
 同時に(部下である)強化担当者に対しては「予算上折り合わないからその補強は諦めてくれ」とストップをかけなければならないこともある。いわば“中間管理職”のようなポジションである。

 親会社のないクラブの場合には、給料だってさほどとっていないケースが多い。中にはボランティア(無給)の社長もいる。
 やはり仕事の大部分は金策である。頭を下げて、スポンサーを探す営業マンだ。
 いずれにしても権力者というイメージとは程遠いのが現実なのである。

 もちろん会社のトップである以上、そしてその会社が勝負を争うサッカークラブである以上、成績不振の責任を最終的に負うのは社長だ。だから矢面に立たされるのは仕方ない。
 中には不用意な発言で反感を買ってしまうような、人柄に問題のある社長もいるだろう。
 でもだからといって――社長を辞めさせれば、チームが強くなるのか。
「社長ヤメロ」のシュプレヒコールを聞きながら、そこが僕にはどうもよくわからない。



*この原稿は「携帯サイト」に掲載されたものです。