不景気な話が多い                       08.10.29

 最近、不景気な話が多い。携帯の画面で、ネガティブな話は読みたくないだろうけど、あまりに多いので、今回は(もしかしたら)暗くなるかもしれない話をする。
 ちょっと我慢して読んでみてほしい。そして考えてみてほしい。

 フリーライターなんて仕事を長年やっていると、色んな人たちとの付き合いが多くなり、結果、色んな考えに触れることになる。
 例えば「サッカー」を取り巻く業界でいえば、専門誌(マガジンとかダイジェストとか)やスポーツ総合誌(ナンバーとスポルティーバ)はもちろん、広告代理店(電通とか博報堂とか)とも付き合いがあるし、ショップ(カモとかスクデットとか)の人たちと会うこともあるし、競技団体(サッカー協会とかJリーグとか)とも話をする。

 当然のことながら、それぞれ立場が違うので常識や価値観も違う。だから「サッカー業界」に対する見方や捉え方も違ってくる。
「雑誌」でも、専門誌と総合誌では読者も切り口も違うし、何より会社が違う以上、カルチャーも違うし、だからやっぱり常識や価値観も違ったりする(もちろん電通と博報堂もやっぱり違う)。

 そんなわけで、色んな立場の、色んな人たちと接することで、僕は「専門誌の人たちは○○と感じているけど、総合誌的にいえばそうではないんだ」とか、「出版界は△△だけど、広告業界からしてみたら□□なのか」とか、要するに、色んな目線から見た「サッカー」を知ることになる。色んな角度から光を当てることで「サッカー」の姿をより客観的に、たぶん正確に捉えなおすことができるのである。
 言うまでもなく、それらの人たちは「サッカー」に対して、極めて“現実的”な把握をし、判断を迫られる人たちである。みんな生活がかかっているから必死だし、シビアにならざるをえない。当然、その分リアリティも増す。

 そんな人たちから伝わってくる話が、ここへ来て、かなり厳しい。しかも、ある業界だけが厳しいのではなくて、どの業界も揃って厳しい。
 出版界でいえば、「サッカーは儲からない」はもはや定説になりつつある。専門誌はどこも青色吐息だし、総合誌もサッカーでは部数が伸びない。
 広告業界も同じだ。大手の広告代理店では「サッカー(特にJリーグ)は赤字を重ねていくばかり」と縮小傾向にある。サッカー好きの担当者はこれまで同様、継続していきたいと思っていても、経営陣からしてみたらこんな儲からない仕事をいつまでも続けている場合じゃないという却下されるのである。
 マーチャンダイジングも良くない。日本代表関連がまったく売れなくなっているのだ。レプリカの売行きがひどくて、高額の権料を払っているアディダスは困惑している。
 かといってJリーグが堅調かといえば、ごく一部のチームを除けば、あまりにも規模が小さい。Jリーグの放映権をグロスで買ったスカパーが、加入者にまったくつながらず、頭を悩ませているのが顕著なサンプルだ。

 加えて世界恐慌である。株価は暴落し、為替も不安定。それぞれの会社そのものが一寸先は闇という環境になってしまった。
 経営が順調であれば、「サッカー」が儲かっていなくても、他の仕事で埋めることができるが、こんな時代になると、赤字部門のリストラを企業としても考えなければならなくなる。

 御存知の通り、Jリーグの多くのクラブは経営がそもそも苦しい。
 それでも「サッカー」を取り巻く業界が活況であれば、苦しくても全体的な盛り上がりと、その富の再分配で何とか凌いでくることができる。苦しい苦しいと言っているクラブがある一方に、ちゃんと余裕のクラブがあれば、リーグとしては何とかやっていくことはできるのである。
 しかし、「サッカー」全体が沈滞してしまえば……。

 ネットの中だけを眺めていると、「サッカー」はいまもホットであるように見える。とりわけサッカー専門のブログやBBSを見ている限りにおいては、サッカーの問題は社会にとっても関心事であるかのように見える。
 しかし、現実はどうだろう? 冷や水を浴びせるつもりはないが、あなたの周囲に、会社や学校に、あるいはそこへ通う道中の電車の中に、サッカーの話題はどの程度起きているだろうか。サポーターはどのくらいいるだろうか。

 にもかかわらず、サポーターだけが集う専門サイトでは「自分のクラブだけがよければいい……」とでもいうような書き込みを目にすることもある。明らかに認識不足だ。オタク化と言ってもいい。「Jリーグの中でのマイクラブ」ではなく、「社会の中でのJリーグ」を俯瞰できないと、この業界はますます小さく狭くなってしまう。

 もちろんJリーグはリーグである以上、一部のクラブだけでは成立しない。相手がいなければ試合だってできないのである。
 そしてJリーグが沈滞すると、その選抜である「日本代表」も低迷していく。ますます小さなお金しか動かなくなる。

 とにかく、実体経済において、「サッカー」は、スタンドでは感じられないほど、危機的状況にある。
 少なくとも“おらが町”のチームのことだけを考えていればいい時代ではない、と僕は思う。


*この原稿は「携帯サイト」に掲載されたものです。