MOVIES 2004

 スパイゾルゲ/篠田正浩
 ナショナリズムが高揚し、歯止め利かなくなっていく昭和10年代の日本を、ソ連のスパイ、ゾルゲと日本人協力者、尾崎の葛藤を通して描く。エンディングのイマジンに象徴される通り、時間と空間を越えて製作された反戦映画。「日本国を裏切ることがあったとしても、日本国民を裏切ることはありません」という尾崎の言葉が印象的。(04.12.29)

 ブルークラッシュ/J・ストックウエル(2002・アメリカ)
 女の子サーファーの青春=挑戦、友達、ファミリー、恋、憧れ。それにしてもサーフィンシーンの映像が凄まじい。いや、その前にノースショアの波が凄まじい。完全ロケとのことだが、背筋がぞくぞくするほど怖かった。おまけにリーフにぶつかるシーンもあり、ただでさえビビりの僕にとっては恐怖心倍増…。(04.11.30)

 あの夏、いちばん静かな海。/北野武
 主人公の2人、真木蔵人と大島弘子の聾唖者という設定が効いている。僕は北野作品に馴染めないのだけど、この映画は独特の省略の妙も違和感なく、全編通じて琴線に触れるものがあった。(04.5.7)

 ミスター・ミセス・ミス・ロンリー/神代辰巳
「誰にも抱かれてなんかいないよう」という原田美枝子のセリフが何とも哀切でかっこいいいATG映画。原田芳雄、宇崎竜童がハマリ役で共演。
 そんなわけで、決して意識的にではないのだけど、今年4本目の原田美枝子なのであった。ちなみに神代監督が大好きな僕はペンネームで使わせてもらっている。(04.3.7)

 木曜組曲/篠原哲雄
 カリスマ小説家(浅丘ルリ子)の謎の自殺を、5人の血縁者や同居人――ノンフィクション作家(鈴木京香)、純文学作家(西田尚美)、ミステリー作家(富田靖子)、画廊経営者(原田美枝子)、編集者(加藤登紀子)が互いを牽制しながら推理していく、舞台劇っぽい作品。(04.3.5)

 
陽はまた昇る/佐々部清
 プロジェクトXの映画版、と言っていいと思う。逆風の中、リストラ目前の技術者を率い、VHS開発を成し遂げたサラリーマン(事業部長)の物語。というわけで、ひとつ間違えば臭〜い話になりかねないのだが、さすが西田敏行!なのだった。実直な中間管理職役で、未来のアカデミーノミネート男優、ケン・ワタナベも好演。(04.3.4)

 ブラックホークダウン/L・スコット
 いつ見ても、かっこいいね、リドリー・スコットの映画は。陰から陽への画面の切り替えと、音楽がめちゃめちゃはまってるんだよなぁ。ちなみに本作はソマリアで窮地に陥ったレンジャー部隊を通して、戦場を皮膚感覚を描いたもの。(04.2.26)

 わたしたちが好きだったこと/松岡錠司
 夏川結衣が見たくて観た映画。恋に破れてボロボロになる物語は多いけど、そこから立ち直っていく心の機微を明示してくれる物語ってあんまりないなぁ(御都合的なのはともかく)、と思いながら、エンディングロールのBEGINが歌う「空に星があるように」を聞いた。(03.2.24)


 ロジャー&ミー/ザ・ビッグ・ワン/M・ムーア
「ボウリング・フォー・コロンバイン」でアカデミーを獲ったマイケル・ムーア監督の出世作。本当は「ボウリング…」も見たかったのだけど、録画し忘れてしまった。
 現代ジャーナリズムの、いつもは思わないけど実はもう一つの事実、「ペンは弱し、カメラは強し」を痛感する。ペンが突撃していく先は、いまや風俗くらいのものなわけで。森達也だってペンよりもカメラを構えた時に凄みが増すわけで。
 それはそうと、かつて日本にもこれと似たようなギミックの映画があったことを忘れてはいけない。「コミック雑誌なんていらない」。もちろん内田裕也がマイクを突きつけた相手はあのミウラさんだったけれど。(04.2.23)

 竜二For ever/細野辰興
 僕にとって特別な映画、『竜二』の脚本・主演を務め、映画の公開と同時に急逝した金子正次を主人公に据えたトリビュート映画。「高橋克典」に大きな不安を抱えていたのだけど、思っていたほど気にならなかった。むしろ、よく成り切っているいるなという印象。そんなことより奥貫薫がキラキラしていて魅力的だった。永島映子役ということを思えば、ちょっと蓮っ葉具合がなさすぎだけど。思いがけずヌードにもなっていたし。
 それよりも『竜二』。19歳の時に名古屋の今池にある名画座(だったと思う)で僕はこの映画を偶然見た。「こんなかっこいい映画があるんだ」とエンディングで萩原健一の「ララバイ」を聞きながら悄然とした。大学に入り、上京した後、生江雄二の「ちりめん三尺ぱらりと散って」も熟読した。とにかく、僕にとって本当に特別な映画なのだ。(04,2,20)

 OUT/平山秀幸
 テレビドラマ化もされた桐野夏生のベストセラー小説の映画化。実力派4人――原田美枝子の気風のよさと、倍賞美津子の男っぷりと、室井滋のノータリンぶりと、西田尚美の<オンナは度胸>――はさすが。見応えあった。が、エンディングはいかがなものか。テレビドラマの時はどんなラストだったけな? 原作は未読にて不明。あ、そうそう、原作は英訳され、このたびエルガー賞にノミネートされたばかり。(04.2.13)

 君は裸足の神を見たか/金秀吉
 角館を舞台に少年から男へ、少女から女へと変わろうとする若者たちの姿を生々しく描く。雪に閉ざされた東北という設定ゆえに、内心の鬱屈が強調されている。洞口依子と石橋保が主演。洞口依子はこの頃からちょっとアクがあっていい。小悪魔的な魅力は少女の頃の方が強いかも。エツコという梅毒が頭に回り来るってしまった女が出てくる。狂人だが、だからこそピュアにも見える役柄。彼女を見ながら、僕が少年時代を過ごした津の三重会館にもメリーさんという不思議な人がいた。いつも真っ赤なを服を着て、毎日朝から晩までバスターミナルのベンチに座っていた。僕はとても興味があったけど、怖くて近寄ることはできなかった。どこに住んでいるのか、何を待っているのか、僕ら子供にとっては謎だった。ついこの前、津に帰った時に友達に「メリーさん」のことをきいたてみたら「死んだ」とのことだった。どうして「死んだ」とわかったのかは不明だったけど。たぶんどこの町にもこの手の都市伝説はあるはず。(04.2.1)

 青春の殺人者/長谷川和彦
 成田闘争をモチーフに、アナーキストたる水谷豊が疾走する。「親殺し」のシーン、水谷豊と市原悦子の絡みは壮絶で秀逸。水谷豊ってやっぱり稀有な役者だったんだよなと改めて。現代的には役柄が見つけにくいけど。もちろん共演の原田美枝子の可憐かつ卑猥さは言うまでもない。見事な肢体も披露している。(04.1.25)

 海辺の家/A・ウインウラー
 余命わずかと告げられた上、会社もリストラされた冴えない建築家が「残り時間」の使い道に選んだのは、それまで暮らしていた断崖絶壁のガレージを取り壊し、新しい家を建てることだった。その改築を通じて、グレた息子、離婚した妻、その妻の亭主であるエリートビジネスマンだが家族を省みない男、近隣住民たちとの絆を取り戻す。最後にようやく手に入れた自発的な温もりの末に、彼の父親が過去に犯した罪――たぶん彼自身の生い立ちや人生観にも暗い影を落とした死亡事故――の責め苦から救われ、安らかに死んでいく。映画の冒頭で「最近誰かから親しく触れられたことがない」と侘しくつぶやく彼が、臨終の時には妻に寄り添われて。
 改築する家の立地(大海に面した崖の突端)が、人生の厳しさとやさしさを無言のうちに感じさせる。(04.1.22)

 なごり雪/大林宣彦
 伊勢正三作「なごり雪」をモチーフに、臼杵の風土と人々の心象を叙情豊かに描いたノスタルジックな映画。大林監督ならではの静謐な映像に、故郷を捨て東京で暮らし、ついには妻子に捨てられた五十男、三浦友和の悔恨とも諦観ともつかぬ独白が溶け込み、人生の無常が全編を通じて漂う。ベンガルはじめ、キャスト全員の抑えた演技がかえって胸を突く。(04.1.9)