soccer

 中澤佑二@横浜F・マリノス      05.2.23


 久々に微妙なインタビューだった。
「微妙」になったのは中澤本人が、僕の予想を裏切るコメントを口にしたからだった。
 テーマは「ディフェンス」、そしてもちろん時節柄「日本代表」だった。

「時節柄」ということで言えば、このワールドカップ予選の真っ只中、選手はネガティブなことを口にしたがらない。チームや指揮官に対する批判的なコメントは(例えインタビュアーが仕向けたとしても)普通ならなかなか語らないものである。もしも、内心にそういう思いがあっても、である。

 加えて中澤が今日対峙したインタビュアー(つまり僕だ)は、実質的に初対面の人間である。中途半端な言葉を吐き出せば、どんなふうに書かれるかわからない。
 もちろんインタビュー前半、彼はこちらの様子を伺っていた。僕がどの程度のサッカーの知識があり、サッカーや日本代表にどんな思いを持っていて、そもそもどんな人間か、ということを警戒心いっぱいに伺っていた。

 ところが後半になると、彼は僕が期待さえしていなかったくらいに、強い表現で現在の日本代表についての自分の思いを吐露し始めたのだ。
 多くの場合、インタビューというのは「聞き出そう」と試み、「語らせる」作業だ。にもかかわらず、後半彼が語り始めてからの僕はむしろ彼を「抑えよう」というさえしていた。

 まさに時節柄、余計な波風を日本代表チームに立てたくないという思いと、現在レギュラーとして定着している選手の立場を危うくしたくないという気持ちからだった。
 このまま書いたら、物議を醸す、ハズされる、と感じたからである。

 でも、僕はライターである。聞いた話は(しかも興味深い話は)書かないわけにはいかない。
 でも、同時に僕はレコーダーではなく、意志を持つライターである。だから、自分の志と責任の元に(例えば時節柄)あらゆることを慮って、原稿を書く。
 そして、レコーダーではないライターの僕ではあるが、インタビュー記事である以上、本人の意向を尊重したいとも考える。つまり、インタビューイーが「覚悟」を決めて語っているのならば、それがセンセーショナルなものであっても、代弁してあげたいと考える。

 そんなこんなで非常に微妙なインタビューであり、微妙な原稿を書くことになった。紙面上(「サッカー批評」)さらりとした“外見”でまとめたが、実はデリケートな作業をした。
 ちなみに普段は、「原稿チェック」を当然の権利のように求めるインタビューイーと広報担当者に対しても、その求めに当然の義務のように隷従する編集者に対しても、この上なく不愉快な態度をとる僕ではあるが、今回は自ら中澤本人と会い、彼の意向を確認した。
 忸怩たる思いがなかったわけではないが、日本代表に対する思いがそれを上回った、と言ってしまってはすでに報道者として失格かもしれない。しかし、そこに葛藤があり、その結果、自らの意志と責任においてのイレギュラーな手続きだったことを、備忘として記しておく。