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 J2開幕戦  湘南 2対0 横浜  @平塚  05.3.5

 2005年シーズンの開幕戦。昨年、一昨年と低迷したベルマーレにとって正念場のシーズンの初戦。
 気がつけばJ2も6シーズン目となった。J1(J)と同じだけの時間をJ2で過ごしたことになる。この分では遅かれ早かれ「強いベルマーレ」を知らない世代が、選手やサポーターに出てくる。「知っている世代」が郷愁をもって、昔を語るようになる日はそう遠くない。
 ベルマーレが目標とするチーム像が「強さ」ではないのなら、気にすることはない(だが、例えば「育てて売る」というスタイルを許容できるほどベルマーレも日本サッカー界もサポーターも大人ではないと思う)。
 正念場である。そろそろ勝負で惹きつけるゲームを披露しないと、復活はより難しくなってしまう。

 チームはすでに昨年第4クールから上田監督を招き、今季へ向けてのスタートを切っていた。その上田監督は「J1昇格」をはっきりと目標として掲げている(去年の「Aクラス・4位以内」なんて中途半端な目標ではない)。
 ともにプレーにおいても精神面においてもインパクトとなり得る加藤と佐藤を移籍で獲得した。組織+個人という視点で眺めても、今季は期待が膨らむ気がする。
 だから、今年は正念場であり、なおかつチャンスだと思う。

 加えて、これは論理的な話ではないけれど、「今年は何かが起きそうだ」という予感を僕は感じている。何かが起きるとすれば今年かも、と開幕が近づくにつれて気持ちが高まっている。
 とにかく開幕戦。44試合という長いシーズンを考えれば近視眼かもしれないが、とにかく開幕戦で結果(勝利)を出してほしい…。そんな祈りにも似た気持ちで平塚競技場へ向かった。

 キックオフ直後。加藤のFKが決まった。インフロントにうまく乗ったきれいな弾道の、鋭いシュートだった。
 さらに13分、自陣ペナルティエリア付近から冨山のクリア気味のロングボールが、左サイドで攻め上がっていた城定につながる。そして中央に走りこんできた柿本に絶妙のタイミングとアングルでのパス。柿本も躊躇なくそのまま左足でシュートを打ち、GKの足元を抜いてゴールが決まった。
 2対0。
 この時点で勝利を確信した僕は、勝ち点3だけでなく、「昇格だ!」と何度も口走って、隣で見ていた隈本さんを(たぶん)失笑させた。でも、そんな気分だった。
 もちろん、わずか1試合開幕戦を勝っただけで「昇格」などと浮かれてよいはずはない。でも、ここ数年の湘南を覆うファジィな空気を吹き飛ばすためには、近視眼でも、浮かれ気分でもいいから、「昇格!」と信じることが必要なのではないだろうか。

「勝て、勝て!」と無理強いしないことが必要な時期も確かにあった。でも、「勝て」(あるいは「勝つ」)と信じてないと実現しないこともある。それに貧しいことは恥ずかしいことではないが、それをエクスキューズにしたり(されたり)するようになっては未来は輝かない。つまらない。無用な気遣いは、時に甘え(甘やかし)にもつながる。
 だから、今年の僕は「勝て」と「昇格」で1年を過ごす。可能性がなくなるまでは諦めずに、昇格を叫び続けたい(信じると裏切られたときの傷が大きいから…なんてもっともらしい姿勢に僕は断固NOと言いたい。勝って歓喜し、負けて絶望しないで、勝負の楽しみを得られるのだろうか)。


          鈴木正

  富山  バリシッチ 浮気   城定

       吉野    佐藤

   保      坂本      加藤

           柿本
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
        城  ジェフェルソン

   中島              北村

       富永    内田

  佐藤   山尾  トゥイード  早川

           菅野


 このゲームの湘南は、上田監督が口にし続けている「ダイレクトプレー」の意識が高く、ゴールへ向かうプレーがキックオフからよく見えた。それが2ゴールにつながった。

 昨シーズンの後半からシュートの意欲が高kなった柿本は、前への動きが多くなった分、ポストプレーに余裕ができ、うまくくさびにもなっていた。
 トップ下に入った坂本、左右の高田、加藤、さらにボランチの佐藤らはいずれも技術も個性もあるので、うまくボールが前につけば最後の部分での、いわゆるイマジネーションでゴールを狙うこともできる。
 ダイレクトプレーでアタッキングサードに早く入り、最後は個人、という今日のゲームのような内容が続けば、そう負けることはない。

 ただし、落とし穴もある。ダイレクトプレーは「ゴール」へ向かうプレーであって、「前」へ蹴るサッカーではない。去年のラスト数試合でも見られたが、前への意識が強くなりすぎた結果、攻撃が単調になってしまう危険性はある。そのあたりの判断(さじ加減)を今日いいプレーを見せた加藤と佐藤、さらにこのゲームでは(意識的にか結果的にかわからないが)ディフェンスに重点を置いた吉野がうまくコントロールできるか。そのあたりは今後のポイントになる。

 またスムーズだった攻守の切り替えだが、本当に押し込まれた試合、あるいは相手がリトリートしてカウンターを狙うような戦い方をとったときに、今日のようにうまくいくか。
 それから今日は大きな問題のなかったディフェンス(横浜FCの攻撃が非力だったことが大きい)だが、中盤を支配された試合でどこまで耐えられるか、あるいは速いFWがいた場合に4バックの間を走られてしまうことはないのか、といったあたりはまだ安心できない部分である。
 さらにもうひとつ挙げれば、後半の30分前後。すでに勝利は手中にあったが、相変わらず「まったり」する時間帯があった。ベルマーレの伝統とはいえ、90分のうちに必ずゲームに集中できない時間が訪れるのはやはり気になった。

 それでも佐藤、加藤のみならず、新人の冨山、新外国人のバリシッチと昨年+αの戦力が期待通り(期待以上)のプレーを披露し、選手層が厚くなったという大きな大きなレベルアップが開幕戦で確認できた。
 ケガ上がりの佐野が完全復帰すれば坂本とのポジション争いも起きる(加藤を右、坂本を左に、という考え方もあるだろう。その場合は高田がサブに回ることになる。現状ではその可能性が高いかも)。いずれにしてもチーム内の競争意識が個人を技術的精神的にたくましく変えるに違いない。
 4バックに白井が復帰すれば、浮気を前に出し、佐藤をさらに前に出すこともできる。昨年までと比べれば、確実にチーム力は上がっている。

 対する横浜はやや厳しい。
 2失点はいずれも崩されたものではなかったが、ディフェンスはある程度できても、攻撃にかかれない。もちろん攻守は表裏一体だが、奪ったボールを攻撃に転じるパスの構成力がもう少しないと効果的な攻撃を始めることは難しい。
 城は相変わらず下がってボールをもらいに来るプレーを続けていた。ボールが出てこないから、というより、ボールに触りながらリズムを作りたい、ということなのだと思うが、現在のチームで中盤で一度触って、その後消えて、再びゴール前に顔を出し…というプレースタイルは難しいと思う。
 また試合後に安達監督に確認したのだが、やはりチームは「城に前に張っている」ことを望んでいる。やはり自分が変わらなければ結果は残せない。結果(ゴール数)を残さなければ、J1に復帰できないし、その上も望めない。あとは本人の本気度次第である。
(トリニダート・トバコのシルビオはなかなか面白かった)。

 開幕戦ということもあったかもしれないが、この日の平塚競技場は7000人超の観客で埋まった。そんなたくさんの人々に快勝を見せることができた。
 チームの勢いがスタンドの盛り上がりにつあがり、それがさらにピッチの選手たちにフィードバックされ…というポジティブスパイラルに乗れれば、本当に何かが起きるかもしれない。

 ちなみにこの日の7000人の中には、かつての強いベルマーレを支えた古前田監督、広報の寿原さん、栗原さん、野口さんもいた。試合前、4人が揃って正面玄関に現れたときの、そして一人ひとりと握手をしたときの、僕の喜びと懐かしさは並大抵ではなかった。涙が出そうだった。彼らは僕にとって恩人といってもいい人々だからだ。
 そんな温かい喜びの中で、僕は改めて「何かが起こるかも」という予感を強く感じたのだった。いい開幕戦だった。